聖クルアーン
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本章名は,第26−33節に巡礼に関して記されるにちなみ,名付けられる。一部にマッカ後期の啓示もあるが,大部分はマディーナ時代の啓示である。本章に続く4章は,精神の作興に貢献する環境と諸勤行とが取扱われる。本章では,聖殿,巡札,犠牲,攻撃されたとき真理を守るための努力や聖戦,ならびに私心を排し,また虚偽を根絶するために必要な諸行為に対する精神面の関連事項が記されている。 内容の概説 第1−25節,人びとは目前の自分のことにとらわれているが,精神的将来の重要性に対する自覚,信仰の堅固さのための努力こそ肝要である。アッラーの計画並びにその目的を付度「そんたく」し,真実に対する助け,悪に対する懲罰の跡につき熱考しなければならない。第26−48節,巡礼によって,純潔,謙虚に信仰を深化するのである。また厳粛に犠牲を捧げることにより,アッラーに対しわれわれの感謝畏敬の念を表現する。また大衆が共に巡礼を行うことにより,真理のための必要に際しては,自分を犠牲にして努力する精神を養う。第49−78節,悪魔の刺激は,使命の遂行を妨げる。しかしそれを排除して使命を果たし,アッラーの慈悲と真理をうち建てなければならない。アッラーに謙虚に仕えるならばアッラーは守護され救助なされる。
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。  
人びとよ,あなたがたの主を畏れなさい。(審判の)時の震動は,全く一重大事である。1
   
その日あなたがたは見るだろう。凡ての哺乳する者は,哺乳することを忘れ,凡ての妊婦はその胎児を流し,また人びとは酔わないのに,酔いしれたように見えよう。思うに,アッラーの懲罰が厳しいからである。2
   
だが人びとの中には,知識もなくアッラーに就いて批判する,反抗的な悪魔などに従う者もいる。3
   
かれ(悪魔)に就いては,こう定められる。「誰でもかれを友とする者があれば,かれはその者を迷わせて,炎の懲罰に導くのである。」4
   
人びとよ,あなたがたは復活に就いて疑うのか。われがあなたがたを創るさいには先ず土から始め,次いで精液の一滴,次いで血の固まりとし,更に形をなした。また形をなさない肉魂から(あなたがたを創った)。あなたがたに(わが偉力を)明示するためである。われは欲する者を,定めた時期まで胎内に置き,それから赤ん坊としてあなたがたを出生させ,それから成年に到達させる。あなたがたの中或る者は(若くして)死なせる者もあり,また或る者は何がしかを知った後,凡て忘れ去る程に弱まる老齢に返される者もある。またあなたは大地が枯れて荒れ果てるのを見よう。だがわれが一度それに雨を降らせると,(生気が)躍動し膨らんで,凡ての植物が雌雄で美しく萌え出る。5
   
これはアッラーこそ真理であり,死者に生を与え,凡てのものの上に全能であられるからである。6
   
本当に,(審判の)時はやって来る。それに就いて疑いの余地はない。本当にアッラーは,墓の中の者を甦らされるのである。7
   
だが人びとの中には,アッラーに就いて知識もなく,導きもなく,また光明の啓典もなく,戯に批判し,8
   
倣限な態度をとって,人びとをアッラーの道から迷わせようとする者がある。かれらは現世において,屈辱をなめ,またわれは審判の日に炎の懲罰を味わせる。9
   
(その時言われよう)。「これは,あなたの手がやったことの報いである。アッラーはそのしもべたちに対し,決して不正をなされない。」10
   
また人びとの中に偏見をもって,アッラーに仕える者がある。かれらは幸運がくれば,それに満足している。だが試練がかれらに降りかかると,顔を背ける。かれらは現世と来世とを失うものである。これは明白な損失である。11
   
かれらはアッラーを外にして,自分に害もなくまた益もないものに祈る。これは遠く迷う者である。12
   
かれらは自分を益するものよりも,害の方に近いものに向かって祈る。何と悪い保護者であり,悪い仲間であることよ。13
   
アッラーは,信仰して善い行いに動しむ者を,川が下を流れる楽園に入らせられる。本当にアッラーは御望みのことを行われる。14
   
アッラーは現世でも来世でも,かれ(使徒)を助けられないと考える者があれば,かれに天井に縄を張らせてみるがいい。それから(自らを地面から)切り離してみるがいい。(首を吊ること。)それでかれのその行為が,かれの怒りを取り除くことが出来るものか,よく眺めさせてみるがいい。15
   
このように,われは明白な印(クルアーン)を下した。本当にアッラーは御望みの者を導かれる。16
   
本当に(クルアーンを)信じる者,ユダヤ教を奉じる者またサービア教徒,キリスト教徒,拝火教徒そして偶像信者たち,アッラーは審判の日に,かれらを裁決なされる。本当にアッラーは凡てのことの立証者であられる。17
   
あなたは見ないのか,天にある凡てのものが,アッラーに,サジダするのを。また地にある凡てのものも,太陽も月も,群星も山々も,木々も獣類も,また人間の多くの者がサジダするのを見ないのか。だが多くは懲罰を受けるのが当然な者たちである。またアッラーが見下げられた者を,誰も尊敬することは出来ない。本当にアッラーは御望みのことを行われる。〔サジダ〕18
   
これら両者は,かれらの主に就いて論争する敵手である。それで(主を)拒否する者のために仕立てられるのは,炎の衣装であろう。かれらに頭上から熱湯が注がれて,19
   
腹の中の物も皮膚も,それで溶かされるであろう。20
   
その上,かれらには鉄の鞭が加えられる。21
   
苦しさのため,そこから出ようとする度に,その中に押し戻され,「火炙りの刑を味わえ。」(と言われよう)。22
   
本当にアッラーは,信仰して善行に励む(外の一団の)者を,川が下を流れる楽園に入らせられる。かれらはそこで,黄金の腕輪と真珠に飾られ,衣装はそこでは絹(ずくめ)であろう。23
   
かれらは純正な言葉に導かれ,讃美すべき方の道に導かれる。24
   
本当に信仰を拒否した者,(人びとを)アッラーの道から妨げる者,そこ(マッカ)の居住者であろうと,外来者であろうと凡て,われが人びとのために建立した聖なるマスジド(に入ること)を拒否する者,そしてその中で神聖を汚し不義を企む者には,われは痛ましい懲罰を味わせるであろう。25
   
われがイブラーヒームのために,(聖なる)家の位置を定め(こう言った)時のことを思いなさい。「誰も,われと一緒に配してはならない。そしてタフーフ(回巡)する者のため,また(礼拝に)立ち〔キヤーム〕,立礼〔ルクーウ〕しサジダする者のために,われの家を清めよ。26
   
人びとに,巡礼〔ハッジ〕するよう呼びかけよ。かれらは歩いてあなたの許に来る。あるいは,どれも痩せこけているラクダに乗って,遠い谷間の道をはるばる来る。27
   
それは自らの(現世と来世の)御利益に参加し,また定められた日の間,かれがかれらに与えられた(犠牲の)家畜の上にアッラーの御名を唱え,それから『あなたがたはそれを食べ,また困窮している者にも食べさせなさい。』28
   
それからかれらの必要な儀式を終え,誓いを果し,そして古来の家(カアバ)を,タワーフしなさい。」29
   
以上(が巡礼の定め)である。アッラーの神聖(な儀式)を順守する者は,主の御許では最も善い者である。それから家畜は,あなたがたに読み聞かされたものを除き,(巡礼中の食料として)合法である。それで偶像の汚れから離れ,虚偽の言葉を避けなさい。30
   
アッラーに純正に服従,帰依し,神々をかれに配してはならない。アッラーに神々を配する者は,丁度天から落ちて鳥に攫われた者のようである。または風が,かれを遠い所に吹き攫った者のようである。31
   
以上(が定め)である。アッラーの儀式を尊重する態度は,本当に心の敬虔さから出てくるもの。32
   
それら(の家畜)は,定めの期限まで,あなたがたに役立てたうえ古来の家(カアバ)の近くで犠牲として捧げられるのだから。33
   
われは凡てウンマの(供儀の)儀式を定めた。かれが授けられる4つ足の家畜の上に,アッラーの御名を唱えなさい。本当にあなたがたの神は,唯一の神であられる。だからかれに服従,帰依しなさい。あなたは,謙虚な者たちに吉報を伝えなさい。34
   
これらの者は,アッラーの御名が唱えられる時,心は畏怖に満ち,遭遇することによく耐え忍び,礼拝の務めを守り,またわれが授けたものを施す者たちである。35
   
また(犠牲の)ラクダ(や牛)を,われはあなたがたのためアッラーの儀式用とした。それらにはあなたがたへの(多くの)利益がある。(犠牲に供えるに当り)並べて,それらの上にアッラーの御名を唱えなさい。そしてそれらが横ざまに倒れ(動かなくなっ)たならば,あなたがたはそれを食べ,また口に出して請わない者,物請いする者たちに食べさせなさい。このようにそれらをあなたがた(の用)に供させるのもあなたがたに感謝の念を起させるためである。36
   
それらの肉も血も,決してアッラーに達する訳ではない。かれに届くのはあなたがたの篤信〔タクフー〕である。このようにかれは,それらをあなたがた(の用)に供させるが,これはあなたがたへのかれの導きに対し,アッラーを讃えさせるためである。善い行いの者たちに吉報を伝えなさい。37
   
本当にアッラーは,信仰する者を守護なされる。アッラーは,裏切り者,恩を忘れる者を御好みになられない。38
   
戦いをし向ける者に対し(戦闘を)許される。それはかれらが悪を行うためである。アッラーは,かれら(信者)を力強く援助なされる。39
   
(かれらは)只「わたしたちの主はアッラーです。」と言っただけで正当な理由もなく,その家から追われた者たちである。アッラーがもし,或る人びとを外の者により抑制されることがなかったならば,修道院も,キリスト教会も,ユダヤ教堂も,またアッラーの御名が常に唱念されているマスジド(イスラームの礼拝堂)も,きっと打ち壊されたであろう。アッラーは,かれに協力する者を助けられる。本当にアッラーは,強大で偉力ならびなき方であられる。40
   
(かれに協力する者とは)もしわれの取り計いで地上に(支配権を)確立すると礼拝の務めを守り,定めの喜捨をなし,(人びとに)正義を命じ,邪悪を禁ずる者である。本当に凡ての事の結末は,アッラーに属する。41
   
仮令かれらが,あなたを虚言の徒であるとしても,かれら以前にも,ヌーフの民も,アードもサムードも(その預言者を)信じなかった。42
   
またイブラーヒームの民も,ルートの民も,43
   
マドヤンの住民も(信じなかった)。またムーサーも拒否された。それでもわれは不信者に猶予を与え,結局かれらに懲罰を与えた。われの拒否はどんなものであったのか。44
   
われはをかれらが悪を行っている間に,如何に多くの町を滅ぼしたことであろうか。それらは,屋根を下にして倒れ潰れた。また(如何に多くの)井戸や堅固な城が見捨てられたことであろうか。45
   
かれらは心に梧りが開けるよう,またその耳が聞くように,地上を旅しなかった。本当に盲人となったのは,かれらの視覚ではなく,寧ろ胸の中の心なのである。46
   
かれらはあなたに,すばやい懲罰を求める。だがアッラーは約束に背かれない。本当に主の御許における一日は,あなたがたの計算する千年に当る。47
   
われは,如何に多くの悪を行う都市を猶予し,それからこれらを処罰したことであろうか。帰り所はわれの許にあるのである。48
   
言ってやるがいい。「人びとよわたしは,あなたがたにはっきり警告する(ため遣わされた)者である。」49
   
信仰して善行に勤しむ者は,御赦しと栄誉ある糧を与えられる。50
   
だがわが印を虚しくするように努める者は業火の仲間である。51
   
あなた以前にわれが遣わした使徒や預言者でも,何か望みをもつと,悪魔がその欲望を唆したものであった。だがアッラーは,悪魔の誘惑を無にされ,御自分の印を堅固になされた。本当にアッラーは全知にして英明であられる。52
   
かれは,悪魔の誘惑で,心に病のある者,心の頑固な者を試みなされる。本当に悪を行う者たちは,(真理から)遠くかけ離れる。53
   
また知識を与えられている者たちは,この(クルアーン)があなたの主からの真理であることを知り,心を謙虚にしてそれを信じる。本当にアッラーは,信仰する者たちを正しい道に導かれる方である。54
   
信仰のない者はそれに就いて疑いを抱き続けよう。(審判の)時が,突然かれらに襲いかかるか,災厄の日の懲罰が来るまでは。55
   
その日,大権はアッラーの有である。かれは,かれらの間を裁かれる。それで,信仰して善い行いをした者は,歓喜の楽園に入る。56
   
背信して,われの印を虚偽であるとした者には恥ずべき懲罰がある。57
   
アッラーの道のために移住し,その後(戦いで)殺され,または死んだ者には,アッラーは必ず善美な糧を与えるであろう。本当にアッラーこそは,最も優れた給養を与える方であられる。58
   
かれは,必ずかれらが喜ぶ所に入らせられる。本当にアッラーは全知にして聡明な御方である。59
   
それは(こうである)。誰でも自分が被ったものと同じ報復をしたのに,また不当な仕打ちをされるならば,アッラーは必ずこの者を助けなされる。本当にアッラーは寛容にしてよく赦される御方である。60
   
それは,アッラーが夜を昼の中に割り込ませ,また昼を夜の中に割り込ませるためである。本当にアッラーは全聴にして全視であられる。61
   
これも,アッラーこそ真実であり,かれらがかれ以外に祈るものが偽りの(神の)ためである。本当にアッラーは至高にして至大であられる。62
   
アッラーが天から水(雨)を降らせられれば,大地が緑になるのをあなたは見ないのか。本当にアッラーは親切にして知悉される御方である。63
   
天にあり地にある凡てのものは,かれの有である。アッラー,本当にかれは,満ち足られる御方,讃美されなべき御方である。64
   
あなたは見ないのか。アッラーは地上の凡てのものをあなたがたに従わせ,かれの命令によって,船を海上に走らせられる。また天をかれの御許しなく地上に落ちないよう支えられる。本当にアッラーは人間に,優しく慈悲を垂れられる御方である。65
   
かれこそはあなたがたに生を授け,間もなく死を与え,それからまた甦らせられる方である。本当に人間は恩を忘れる。66
   
われは凡てのウンマに守られるべき儀式を定めた。それでこれに関し,かれらにあなたと論争させてはならない。あなたの主に(かれらを)招きなさい。本当にあなたは,正しい導きの上にいる。67
   
かれらがもしあなたがたと論争するならば,言ってやるがいい。「アッラーは,あなたがたの行うことを最もよく知っておられる。68
   
アッラーは審判の日に,あなたがたがそれに就いて相違したことに関し,あなたがたを裁かれる。」69
   
あなたはアッラーが,天にあり地にある一切を知っておられることを知らないのか。それは凡て記録に載せてある。それは,アッラーにおいては容易なことである。70
   
かれらはアッラーを外にして,何の権威も授かっていないもの,またそれに就いて何の知識もないものを崇拝している。悪を行う者には援助者もない。71
   
われの明瞭な印が読誦される時,あなたは信仰しない者たちの顔に,拒絶の色が浮かぶのを認めるであろう。かれらにわが印を読誦する者に向かって,攻撃を加えようとさえする。言ってやるがいい。「わたしはそれよりも更に悪いものを,あなたがたに告げようか。それは火獄である。アッラーは信仰しない者たちに,それを約束なされる。何と悪い住居であることよ。」72
   
人びとよ,一つの比(輪?)を説くから,それを謹んで聞きなさい。本当にあなたがたがアッラーの外に祈るものは,仮令かれらが束になっても,一匹の蝿(さえ)も創れない。また蝿がかれらから何か奪い去っても,それを取り戻すことも出来ない。祈る者も,祈られる者も,全く力がないのである。73
   
かれらは,アッラーの真価の程を評価していない。本当にアッラーは強大にして偉力ならびなき御方である。74
   
アッラーは,天使と人間の中から,使徒を選ばれる。本当にアッラーは全聴にして全視であられる。75
   
かれは,かれらの前にあるものも,かれらの後ろに有るものをも知っておられる。アッラーの御許に(凡ての)事物は帰されるのである。76
   
あなたがた信仰する者よ。立礼〔ルクーウ〕しサジダして,あなたがたの主に仕えなさい。そして善行に動しめ。必ずあなたがたは成功するであろう。〔サジダ〕77
   
アッラーの(道の)ために,限りを尽くして奮闘努力しなさい。かれは,あなたがたを選ばれる。この教えは,あなたがたに苦業を押しつけない。これはあなたがたの祖先,イブラーヒームの教義である。かれは以前も,またこの(クルアーン)においても,あなたがたをムスリムと名付けられた。使徒はあなたがたのための立証者であり,またあなたがたは人びとのための立証者である。だから礼拝の務めを守り,定めの喜捨を行い,確りとアッラーに縋りなさい。かれはあなたがたの守護者である。何と優れた守護者,何と優れた援助者であることよ。78
   
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