聖クルアーン
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本章は,ヒジュラ5年アラビアの諸族が連盟して,アル・マディーナを囲み,一挙にイスラームを壊滅しようとしたときの,第9−25節の啓示にちなんで部族連合章と名付けられる。同年から7年ごろまでの啓示とされる。実にマッカのグライシュ族は,聖預言者及びその追従者に暴力と迫害のかぎりを加え,ついに居住に耐えられず聖遷(ヒジュラ元年・西暦622年)となり,翌2年の9月には,バドルにおいて聖預言者ムハンマドはマッカ軍と戦って大勝を博し,またヒジュラ3年10月,かれらはその報復のため来襲したが,アル・マディーナの郊外オホドにおいて退陣させられた。しかしその後ユダヤのナシール族の策動で,ヒジュラ5年10月から11月にわたり,クライシュ族を主体とし,ュダヤ人とアラビア諸族の約一万人の連合軍が,ふたたびアル・マディーナに来襲した。このとき聖預言者はペルシャ人サルマーンの献策を用い,アル・マディーナの周辺に塹壕を掘りめぐらし,3千の兵でそれを迎撃し,それは2週間余(27日間ともいわれる)に及び,敵は食料の補給と寒さに悩まされているところに,ある一夜風雨がにわかに至り,マッカ軍は敗北したかのように退却し,他の諸族も軍を返し,イスラームの地歩をさらに高める結果となった。この戦いは塹壕の役として知られている。本章のいま一つの主題は婦人間題で,聖預言者はこの戦の年に,かれの養子ザイドが離別したザイナブと,結婚したことに関する啓示である。聖預言者の妻たち及び一般ムスリム婦人の地位と尊厳は,その名誉を守り中傷や無礼なことがないよう有効に配慮され,婦人はイスラーム共同体のため奉仕に訓練される。ザイナブはとくに貧民救済において有名である。また戦傷者の看護は婦人に負うところ多く,ヒジュラ7年のハイバル遠征にも婦人が出向いて,看護に当った事実もあり,当時イスラーム共同体のために帰人の尽くした功績は少くない。 内容の概説 第1−8節,多神教徒の迷信や悪い慣習を捨て,アッラーの守護を信頼し,男も女も血縁地縁関係や精神的なつながりを,尊重するよう教えられる。第9−27節,塹壊の役,ならびに戦いによる教訓である。第28−52節,聖預言者の高い地位とそれにふさわしい行いにつき示され,(ザイナブの場合の)不幸な結婚は,愚かな遠慮の下に永続さるべきものではなく,聖預言者の妻たちは,親切に優しく遇するよう注意される。第53−73節,聖預言者とその家族を尊敬し,中傷をさけ言葉を慎しみ,アッラーに対し責任を果たすよう教えられる。
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。  
預言者よ,アッラーを畏れ,不信者や偽信者に従ってはならない。本当にアッラーは全知にして英明であられる。1
   
主からあなたに啓示されたところに従え。本当にアッラーは,あなたの行うことを知り尽くされる。2
   
アッラーに凡てを托しなさい。本当にアッラーは,管理者として万全であられる。3
   
アッラーはどんな男の体の中にも2つの心臓を創られない。あなたがたが,「わが母の背中のようだ。」と言って(離縁宣言する)妻をあなたがたの産みの親と同一に御創りにはなられない。またかれはあなたがたの養子を,あなたがたの実子ともなされない。これらは,あなたがたが口先だけで言ったことである。だがアッラーは真実を語り,且つ(正しい)道に導かれる。4
   
かれら(養子)の父(の姓)をもってかれらを呼ぺ。それがアッラーの御目に最も正しいのである。もしかれらの父(の姓)を知らないなら,信仰におけるあなたがたの兄弟,友ということにするがよい。あなたがたがそれに就いて誤ることがあっても,罪ではない。だがあなたがたの心に悪い意図のある場合は別である。アッラーは覚容にして慈悲深き御方であられる。5
   
預言者は,信者にとりかれら自身よりも近く,またかれ(聖預言者)の妻たちはかれら(信者たち)の母である。またアッラーの定めでは実の血縁関係者は互いに,信仰上の兄弟(アンサール)や(マッカよりの)移住者よりも親近である。だがあなたがたの味方のためには,親切にしてやれ。これは啓典に記されていることである。6
   
またわれが,預言者たちから誓約をとった時を思い起こしなさい。あなたからも,またヌーフ,イブラーヒーム,ムーサー,マルヤムの子イーサーからもとった時のことを。われは,厳かにかれらから誓約をとったのである。7
   
(これは主が)忠誠な者に,かれらの忠誠さを問われるためである。かれは不信心者たちのために,痛ましい懲罰を備えられる。8
   
信仰する者よ,あなたがたに与えられたアッラーの恩恵を念え。大軍があなたがたに攻め寄せて来た時,われはかれらに対し大風と,目に見えぬ軍勢を遣わした。アッラーは,あなたがたの行うことを(明確に)御存知であられる。9
   
見るがいい。かれらは,あなたがたの上からまた下から襲って来た。その時目は霞み,心臓は喉もとまで届いて,あなたがたはアッラーに就いて,色々と(悪い)想像をした。10
   
こうして信者たちは試みられ,かれらは猛烈な動揺に播さぶられた。11
   
その時,偽信者や心に病の宿っている者たちは,「アッラーとその使徒は,只欺いてわたしたちに約束したのです。」と言った。12
   
またかれらの一団は言った。「ヤスリブ(アル・マディーナ)の民よ。あなたがたにはとても頑張れるものではない。引き返しなさい。」またかれらのある者は,預言者に(帰還の)許しを願って,「本当にわたしたちの家は(無防備で危険に)晒されています。」と言った。かれらは,晒されているのではない,只逃亡を望んだだけである。13
   
もしかれら(敵軍)が四方からそこに侵入して来て,反乱を呼びかけたなら,かれらは必ずこれを受け入れ,少しも(それに)遅れることはなかったであろう。14
   
しかもかれらは先に,決して背き去らないと,アッラーに誓っていた。アッラーとの約束は,(必ず)尋問されるのである。15
   
言ってやるがいい。「逃亡は,仮令死や戦死から免れても,あなたがたを益さない。あなたがたは隙の間を楽しむ丈である。」16
   
言ってやるがいい。「アッラーが,あなたがたに災いを望まれ,また慈悲を施そうと望まれた時誰が,それを差し止められようか。アッラーをおいては,かれらの保護者も援助者もいないのである。」17
   
アッラーは,あなたがたの中(人びとを)引きとめた者,またその同胞に向かって,「わたしたちの方ヘ来い。」と言った者を知っておられる。またかれらは僅かの間の外,戦場には臨まなかった。18
   
かれらはあなたに対して,貪欲である。まあ見るがいい。かれらに危険が訪れると,臨終の人のように目玉をぐるっと廻して,あなたを熟視する。そして危険が去ると良いものばかり貪り,唇を尖らせてあなたがたを痛烈に非難する。これらの者は信者ではない。アッラーは,かれらの行いを無益になされる。それはアッラーには容易なことである。19
   
かれらは,部族連合軍は敗退したのではないと考えている。もし部族連合軍が(再び)来ることがあれば,かれらはベドウィン族の間に身を置いて,あなたがたの消息を尋ねる(立場になる)ことを願っている。またもしかれらがあなたがたの中にいても,僅かの者の外は戦わないであろう。20
   
本当にアッラーの使徒は,アッラーと終末の日を熱望する宕,アッラーを多く唱念する者にとって,立派な模範であった。21
   
信者たちは,部族連合の軍勢を見た時言った。「これはアッラーとかれの使徒が,わたしたちに約束されたものである。アッラーとかれの使徒は,真実を話された。」それは,かれらの信心と服従,帰依の念を,嫌が上にも深めた。22
   
信者の中には,アッラーと結んだ約束に忠実であった人びとが(多く)いたのである。或る者はその誓いを果し,また或る者は(なお)待っている。かれらは少しも(その信念を)変えなかった。23
   
(これは結局)アッラーが,忠誠な人々に対しその忠誠さに報われ,またかれが御望みならば,偽信者を罰し,あるいはかれらを赦されるということである。本当にアッラーは,寛容にして慈悲深き御方であられる。24
   
アッラーは不信心な者たちを,怒りのうちに(アル・マディーナから)何ら益するところなく撤退なされた。戦いには,アッラーは,信者たちの戦闘を(強風や天使によって)凡てにわたって,守って下さる。アッラーは強大にして偉力ならびなき方であられる。25
   
またかれは,かれら(連合軍)を後援した啓典の民を,それらの砦から追い,その心中に恐怖を投じられた。あなたがたは或る者を殺し,また或る者を捕虜とした。26
   
またかれは,かれら(啓典の民)の土地,住宅,財産またあなたがたの未踏の地を,あなたがたに継がせられた。アッラーは凡てのことに全能であられる。27
   
預言者よ,あなたの妻たちに言ってやるがいい。「もしあなたがたが,現世の生活とその煌びやかさを望むなら来るがいい。わたしは贈り物を与えて,立派に別れよう。28
   
だがあなたがたたがもしアッラーとその預言者,そして来世の住まいを求めるならば,あなたがたの中で善行に動しむ者には,アッラーは偉大な報奨を準備して下さっている。」29
   
預言者の妻たちよ,あなたがたの中で明白な醜行を犯した者は,それに対する懲罰は倍加されよう。アッラーにはそれは容易なことである。30
   
だがあなたがたの中,アッラーとその使徒に服従,崇敬して善行に励む者には,われはそれに対する報奨を倍加し,寛大な用度を準備するであろう。31
   
預言者の妻たちよ,あなたがたは(外の)女たちと同じではない。もしあなかがたがアッラーを畏れるならば,心に病ある者の意を動かさせないよう,言葉が軽くてはならない。端正な言葉でものを言え。32
   
あなたがたの家に静かにして,以前の無知時代のように,目立つ飾りをしてはならない。礼拝の務めを守り,定めの施しをなし,アッラーと使徒に従順であれ。家の者たちよ,アッラーはあなたがたから不浄を払い,あなたがたが清浄であることを望まれる。33
   
またあなたがたの家で読誦される,アッラーの印と英知を銘記せよ。本当にアッラーは親切にして全知であられる。34
   
本当にムスリムの男と女,信仰する男と女,献身的な男と女,正直な男と女,堅忍な男と女,謙虚な男と女,施しをする男と女,斎戒(断食)する男と女,貞節な男と女,アッラーを多く唱念する男と女,これらの者のために,アッラーは罪を赦し,偉大な報奨を準備なされる。35
   
信仰する男も女も,アッラーとその使徒が,何かを決められた時,勝手に選択すべきではない。アッラーとその使徒に背く者は,明らかに迷って(横道に)逸れた者である。36
   
アッラーの恩恵を授かり,またあなたが親切を尽くした者に,こう言った時を思え。「妻をあなたの許に留め,アッラーを畏れなさい。」だがあなたは,アッラーが暴露しようとされた,自分の胸の中に隠していたこど(養子の妻との結婚が人の口の端に上がること)を恐れていた。寧あなたは,アッラーを畏れるのが本当であった。それでザイドが,かの女に就いて必要なことを済ませ(離別し)たので,われはあなたをかの女と結婚させた。(これからは)信者が,必要な離婚手続きを完了した時は,自分の養子の妻でも,(結婚にも)差し支えないことにした。アッラーの命令は完遂しなければならない。37
   
預言者が,アッラーの御命令を行うのは妨げない。これはあなた以前の者に対するアッラーの慣行である。アッラーの命令は動かせない定めである。38
   
アッラーの御告げを伝える者たちは,かれを畏れ,アッラー以外の何ものをも畏れない。アッラーは清算者として万全であられる。39
   
ムハンマドは,あなたがた男たちの誰の父親でもない。しかし,アッラーの使徒であり,また預言者たちの封緘である。本当にアッラーは全知であられる。40
   
あなたがた信者よ,アッラーをつねに唱念〔ズィクル〕しなさい。41
   
朝な夕な,かれの栄光を讃えなさい。42
   
かれこそは,あなたがたを暗黒から光明に連れ出すために,天使たち共々あなたがたを祝福なされる方である。かれは真の信者に,慈悲深くあられる。43
   
かれらがかれに会う日の挨拶は,「平安あれ。」である。かれらのために,寛大な報奨を準備なされる。44
   
預言者よ,本当にわれはあなたを証人とし,吉報の伝達者そして警告者として遣わし,45
   
かれの許しで(人びとを)アッラーに招く者,光明を行き渡らせる燈として(遣わした)のである。46
   
それで信者たちにアッラーからの偉大な賜物があるとの吉報を伝えなさい。47
   
無信仰の者や偽信者に,従ってはならない。かれらの煩わしさを意にとめず,只ひたすらアッラーに(全てを)托しなさい。アッラーは,(凡ての事の)管理者として万全であられる。48
   
信仰する者たちよ,あなたがたは信者の婦人と結婚し,かの女に触れないうちに離婚する場合は,かの女らに就いて定めの期限を計算しなくてもよい。かの女らに贈与をなし,面目を立ててきれいに離別しなさい。49
   
預言者よ,われがあなたの妻として許した者は,あなたがマハルを与えた妻たち,また捕虜としてアッラーがあなたに授けた,あなたの右手の所有する者,あなたの父方のおじ,おばの娘たち,母方のおじ,おばの娘たちで,あなたと共に移住してきた者,また女の信者で心身を預言者に捧げたという者で,もし預言者がこれと結婚を欲するならば(許される)。これはあなただけの(特例)で,外の信者たちには許されない。われは,あなたが窮地に陥いらないようかれら(信者)の妻,とその右手の所有する者に就いて,かれらにわれが決めたことは承知させている。アッラーは寛容にして慈悲深い方である。50
   
あなたは妻たちの中の,欲する者を去らせ,欲する者を受け入れてもよい。またあなたが退けていた者を召しても罪はない。これはかの女らを喜ばせ,その心の憂いを解き,またあなたが各自に与えるもので満足させるため妥当である。アッラーはあなたがたが胸に抱くことを知っておられる。アッラーは全知にして大度であられる。51
   
あなたはこの後,女(を娶ること)もまた妻たちを取り替えることも許されない。仮令その美貌があなたの気をひいても。ただしあなたの右手が所有する者は別である。アッラーは凡てのことを監視なされる。52
   
信仰する者よ,預言者の家に食事に呼ばれても食事の準備が,完了するまでは,家の中に勝手に入ってはならない。だが呼ばれた時は入りなさい。食事が終ったならば立ち去れ。世間話に長座してはならない。こんなことが預言者に迷惑であっても,預言者はあなたがたを(退散させることを)遠慮するであろう。だがアッラーは真実を(告げることを)遠慮なされない。またあなたがたが,かの女らに何ごとでも尋ねる時は,必ず帳の後からにしなさい。その方があなたがたの心,またかの女らの心にとって一番汚れがない。またあなたがたは,アッラーの使徒を,悩ますようなことがあってはならない。またあなたがたはどんな場合でも,かれの後でかれの妻たちを娶ってはならない。本当にそれらは,アッラーの御目には大罪である。53
   
あなたがたが何か現わしてもまた隠しても,アッラーは凡てのことを深く知っておられる。54
   
かの女たちが(ヴェールをとっても)罪ではないのは,かの女らの父または息子,それから兄弟,兄弟の息子または姉妹の息子,または同信の女たちとかの女たちの右手が所有する者たちである。(婦人たちよ。)アッラーを畏れなさい。アッラーは本当に凡てのことの立証者であられる。55
   
本当にアッラーと天使たちは,聖預言者を祝福する。信仰する者たちよ,あなたがたはかれを祝福し,(最大の)敬意を払って挨拶しなさい。56
   
本当にアッラーと使徒を悩ます者には,アッラーは現世でも来世でも,激怒なされ,かれらのために恥ずべき懲罰を準備なされる。57
   
また理由もなく,男女の信者を不当に悩ます者は,必ずそしられて明白な罪を負う。58
   
預言者よ,あなたの妻,娘たちまた信者の女たちにも,かの女らに長衣を纒うよう告げなさい。それで認められ易く,悩まされなくて済むであろう。アッラーは寛容にして慈悲深くあられる。59
   
もし,偽信者や心に病の宿る者,そして市中の扇動者たちが,(その悪事を)止めなければ,かれらに対しあなたを,駆り立ててやろう。そうすればこの後,かれらがあなたがたの隣人としていられるのも,僅かの間であろう。60
   
かれらは必ず呪われ,見つかり次第捕えられ,殺されるであろう。61
   
これは昔の過ぎ去った者たちに対する,アッラーの慣行である。アッラーの慣行には何の変更もない。62
   
人びとは(審判の)時に就いてあなたに尋ねよう。言ってやるがいい。「本当に,その知識は,アッラーの御許にある。どうしてあなたに分るだろうか,その時は近いであろう。」63
   
本当にアッラーは不信者に激怒され,かれらのために烈火を準備なされ,64
   
かれらは永遠にその中に住み,守護者も救助者も見い出せないであろう。65
   
その日,かれらの顔が火の中でひっくり返り,かれらは,「ああ,わたしたちはアッラーに従い,また使徒に従えばよかった。」と言うだろう。66
   
またかれらは言うだろう。「主よ,わたしたちは,本当に頭や権力者たちに従っていました。かれらがわたしたちを,道に迷わせたのです。67
   
主よ,かれらの懲罰を2倍にして,酷い激怒でかれらに御怒り下さい。」68
   
信仰する者よ,ムーサーを悩ました者のようであってはならない。だがアッラーはかれらの言った中傷から,かれを清められた。アッラーの御許で,かれは栄誉を与えられていた。69
   
信仰する者よ,アッラーを畏れなさい。(常に)実直な言葉でものを言いなさい。70
   
かれはあなたがたのためにその行いを矯正され,諸々の罪を赦される。アッラーとその使徒に従う者は,確かに偉大な幸福を成就する者である。71
   
本当にわれは,諸天と大地と山々に信託を申しつけた。だがそれらはそれを,担うことを辞退し,且つそれに就いて恐れた。人間はそれを担った。本当に(人間は)不義でありかつ無知である。72
   
(それで)アッラーは,偽信者の男たちと女たち,また多神教徒の男たちと女たちを,処罰なされる。だがアッラーは,信仰する男たちと女たちには,哀れみをかけられる。アッラーは寛容にして慈悲深い御方であられる。73
   
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